第11回 株式会社電力計算センター 様

事例カテゴリー

株式会社電力計算センター

システム統括室 室長 岩井田浩章氏
運用管理上の課題を解決すべくXupperで設計情報をDB 化

顧客システムの運用管理業務においては、不具合対応や追加開発など、設計情報からシステム仕様を確認しなければならないことも多い。しかし、設計時点から運用工程での利用を想定した形で整理しておかなければ、設計情報は非常に扱いにくいものとなってしまう。電力計算センターでは、Xupperでビジネスフロー、エンティティおよびプロセスなどの情報をデータベース化し、こうした状況を改善。設計情報の有効活用を可能にした。

リポジトリによる一元管理。全工程での生産性向上を実現するXupper

 複雑化するユーザのニーズに的確に応えながら、低コスト・短納期が求められる今日のシステム開発を成功させるためには、まず、上流工程で、ユーザニーズを正確に把握して、その後の中・下流工程の開発につなげていくことが重要なポイントとなる。


 こうした要求に応えるのが上流分析/設計ツールXupperである。その最大の特長は、業務を可視化することで経営者やユーザ部門にも分かりやすく、システム部門とのコミュニケーションがきちんととれることだ。

 さらに、設計情報がリポジトリで一元管理されているため、システム開発の工数削減と品質向上が可能になることだ。設計途中で仕様変更が発生した場合も、クロスリファレンス機能を使用することで、影響分析や一括修正が可能となり、大幅な品質向上が図れる。


 さらにXupperのリポジトリを拡張したMDFrame/X を使用することで、Java・ .NET(C#) のプログラムを自動生成することが可能だ。上流から下流までの設計情報が一元管理されるため、保守を含めたシステム開発全体での大幅な生産性・品質の向上が可能となる。

株式会社電力計算センター

設計情報の扱いにくさがシステム運用上の課題に

 電力計算センターは、IT プロバイダとしてA 社システムの運用管理を行っている。対象システムは、財務会計や資産・プロジェクト管理、人事労務・給与管理などの各システムをデータ連携し、ポータルで入口を統一した「基幹業務統合システム」だ。


 この基幹業務統合システムは、業務システムの統合を目的とした約2 年間の大規模な再開発によって構築された。サーバ台数は22 台で、そのうち運用系が12 台。Windows 系とLinux 系が混在し、ミドルウェアはWebSphere Application Server にOracle9i Real Application Clusters という基本構成だ。

 なお、スクラッチ開発およびパッケージカスタマイズ開発を含む業務アプリケーションのプロセス数は約1800、データベースのテーブル数は約1000 となっている。


 電力計算センターでは、A 社の要求に対応すべく基幹業務統合システムの運用開始後も小規模な追加開発や改良・改修を行ってきたが、そこではさまざまな問題が発生していた。

 たとえば、システム更新にあたっては当然、影響範囲を事前に把握する必要があるが、その特定にはかなりの時間を要した。業務アプリケーション設計書の更新にも非常に手間がかかっていた。

 また、追加開発発生時に限らず、通常の運用においても、顧客からの質問に対する回答に時間がかかる、業務アプリケーションの情報(仕様)が見えにくいといった課題を抱えていた。


 これらはすべて、「設計情報の扱いにくさ」に起因する問題だ。もちろん、運用開始時点の詳細設計書は存在し、A 社にも納品されているが、これだけプロセス数もテーブル数も膨大なシステムの設計書の中から必要な情報をすぐに探し出すのは難しい。こうした状況を改善するために、電力計算センターでは次のような対策が必要と判断した。

 まずは、プロセスとデータの関係を明確にする。そこから業務フローを明確にして、扱いやすく整理することで人の判断を支援する。

 そのための作業として、基幹業務統合システムの設計情報に対し、データ情報やプロセス情報、CRUD 情報の再整備を行い、業務フロー情報を追加する。そして、それらを利用しやすい環境を実現するために、情報参照用インターフェースなども作成する。

Xupperの利用を前提に手作業で設計情報を整理

 電力計算センターは、まず「どうすれば設計情報を利用しやすくできるのか」という観点から、「簡易ポータル」のイメージを作成した。

 これは、業務処理間の関係を、データを中心に表現し、マップ化したものだ。A 社の協力を得たことで、「財務会計」「資産」「購買」といった業務や各種処理、更新・参照などのデータの流れを、ユーザにも理解しやすい形でまとめることができた。


 次に行ったのが、利用するツールの選定だ。Xupperのほかには、ソースプログラムからCRUD 情報をリバース生成する方法も検討したという。しかし、調べてみても該当する製品は存在せず、自社で開発するには負担が大き過ぎた。

 また、フリーウェア(当時)のツールも候補に上がったが、業務フローが扱えることや出力機能が豊富であること、そして過去に利用経験があったことなどが決め手となり、Xupperを選択した。


 ツール決定後は、さっそく設計情報を整備する実作業を開始した。最初は手作業による設計情報起こしである。

 基幹業務統合システムの運用開始時点の情報に関しては、Excel形式のCRUD 表がまとまっていたので、それを精査。そこに、運用開始後に電力計算センターで改良・改修した差分を追加していった。

 また、大規模な追加開発を行った際のCRUD 情報がなかったので、その分はExcelでCRUD 表を新規作成し、現状との整合性を確保した。


 さらに、導入しているパッケージソフトウェアの設計情報についても、パッケージベンダに業務委託という形で協力を依頼。もちろん、設計情報(仕様)が開示されない製品もあり、一部は抜ける形になってしまうが、財務会計パッケージ「FinaliZe」を提供しているゼストプロの協力を得ることができた。

 これにより、FinaliZe の設計情報をExcel のCRUD 表にまとめ、さらにカスタマイズによる差分情報も追加された設計情報を入手できた。

5つの壁をクリアしてDB化公開設計情報をHTMLで出力

 Xupperに情報を入力してデータベース化する段階では、以下のような「5 つの壁」があったという。

  1. ①CSV 形式にまとめても、一括入力できない情報がある
  2. ②マトリックス分析からの出力はプリンタ形式のみ
  3. ③ビジネスフロー図からの出力はプリンタ形式のみ
  4. ④アプリケーションエリアの更新に時間がかかる
  5. ⑤繰り返し利用される共通部品などのオブジェクトの扱い

 ①はCRUD 情報のことを指している。プロセス情報やエンティティ情報と異なり、CRUD情報はCSV 形式でXupperへの一括入力ができない。これについてはシンプルに「こつこつと手入力」することで対応した。


 ②③は入力後の問題だが、Xupperにまとめた設計情報をさまざまな形で活用していくためにも、ある程度汎用性の高い形式への出力が必要と考えていた。そこで、ケン・システムコンサルティングから提供されているQuery API Sample のExcel 形式マクロやBFD 関連機能(Version 2.20)を活用し、Excel およびHTML 形式での出力を実現した。


 ④についてはCRUD 情報と同様に、エンティティの括りは「こつこつと更新」することで対応した。


 ⑤についてはXupperのDLCP 機能への入力を検討したが、BP やDAP のマトリックス分析を外部出力する機能がないことや、入力作業工数の見積りも膨大であったことから断念。そこで、「全対象エンティティ」と「共通部品」、「プロシジャー」と「プロセス」など8種類の組み合わせについて、「エンティティ」と「プロセス」の関係と同様に表現した。ただし、設計時点からXupperを使用する場合なら、やはりDLCP 機能を用いるのが有効だという。


 こうして5 つの壁もそれぞれクリアし、準備した設計情報をすべてXupperに入力した。これでデータベース化自体は完了するわけだが、電力計算センターはさらに、設計情報を「利用しやすい仕組み」を追加。

 Xupperに格納した設計情報をQuery API Sample を使ってHTML 出力し、それを最初に作成した「簡易ポータル」のマップにリンクさせた。

 たとえば、「財務会計」をクリックすると対応したビジネスフロー図が表示され、そこからマトリックス(CRUD 表)などもリンクでたどれる仕組みだ。これによって、運用管理担当はもちろんA 社のユーザも、簡易ポータルから直観的に必要な設計情報を参照することができる。


 この仕組みを有効に活用していくために、電力計算センターは変更管理・リリース管理を手順化した。まず、設計情報の確認、変更要求の妥当性確認・承認を経て、構成変更を行う。

 そして、設計情報DB(Xupper)を変更したらHTML に出力。「公開設計情報」として、簡易ポータルのリンクを差し替えていく。こうすることによって、常にXupperで管理している最新の設計情報に、簡易ポータルからアクセスできるというわけだ。


 設計情報をデータベース化した効果としては、やはり設計情報が利用しやすくなったことが第一に挙げられる。設計情報を有効に活用することによって、作業効率の向上と判断ミスの軽減を図ることもできた。

 また、顧客の経営層に対して、基幹業務統合システムの理解を深めるための道具としても有効に機能しているという。


 すでに、簡易ポータルからの検索機能やビジネスフロー図の拡充など、いくつかの機能改善案も上がっており、今後それらにも順次対応していく。また、電力計算センターでは今回の経験を通じ、「今後は設計時から運用管理を強く意識し、積極的にXupperを活用する」と考えている。

jirei_download.png