第18回 株式会社明治座 様

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株式会社明治座 様

無意識に騙し絵を描かない為に

~ シンプルで強靱な業務モデルを構築する方法 ~

上流工程で要件を定義する際に、無意識に誤った方向性のモデルを描いてしまうことがある。赤氏はそれを「騙し絵を描く」と表現する。全体を見てようやく騙し絵のからくりに気づくように、後工程に進んではじめて上流で間違いを犯していたことに気づくからだ。赤氏による「無意識に騙し絵を描かない為に~シンプルで強靭な業務モデルを構築する方法~」と題する講演の内容を紹介する。

組織のコミュニケーションをうながす適切なモデル

 明治座の業務管理室 室長で、DAMA日本支部の広報担当理事を務める赤氏。もともとベンダーでプログラマーやSE として活動し、その後、ユーザー企業側に移り、情報システム部門や業務改革を担当。現場の視点にこだわりつつ、上流工程におけるコミュニケーションのあり方を追求している。Xupper ユーザーとして、これまでも講演を行ってきたことでもお馴染みだ。

 そんな赤氏が今回掲げたテーマは「騙し絵」を描かないための方法。具体的には「シンプルで強靭なモデル」をどう作り、活用するかということだ。赤氏はまず、池波正太郎の小説「真田太平記」や「旅路」などを引き合いにこう切り出した。 「『この世のなかは、それぞれの勘違いによって成り立っている』し、『さまざまな数えきれない色合いによって成り立っている』。開発やビジネスの現場もそう。勘違いが当たり前のようにある騙し絵のようなものだ。無意識に騙し絵が描かれていることに気づかないまま、後工程に進み、騙し絵のからくりに気づいたときには、すでに遅いという事態に陥りがちだ」

 そこで大事になってくるのがコミュニケーションだという。そして、コミュニケーションを円滑に行うために必要になるのが、シンプルで強靭な業務モデルだ。「業務モデルは理屈よりもわかりやすさを優先するのがポイントだ。また、データを中心に考えていくことが求められる」と赤氏。

リポジトリでデータソースを一元管理するメリット

 赤氏によると、エンタープライズアーキテクチャ(EA)やXupperなどのツールも「データ」を重視しているのだという。これには理由がある。データをきちんと定義しておくことで、後工程の品質が確保されるからだ。データ定義を怠ると、たとえば、ヤードとポンドを取り違えた結果、航行ミスが起こり、火星探査機を人為的に爆破せざるをえなくなったNASA のような事態に陥ることすらある。

 「自然に正しいデータが溜まる仕組みを構築することが大切だ。その際のポイントは上流工程からデータマネジメントの概念をすり込んでおくということ。そこで、重要になってくるのがリポジトリだ」(赤氏)

 リポジトリには、作成したデータモデル、プロセスモデル、CRUDマトリックスなどの情報が一元的に集約される(図1)。リポジトリがあることで、データベースのフィールドがどのエンティティ、画面で使われているかを即時に把握できる。これにより、影響度分析などが容易にできるようになる。さらに、成果物を自動的に生成するといったことも可能だ。

 赤氏は、「プロジェクトの隠れたコストには、コミュニケーションのコストと成果物作成のコストがある。コミュニケーションコストはモデルの構築で削減できる。成果物作成のコストをリポジトリ搭載のツールを使うことで削減することができる」と解説した。

   図1:リポジトリにデータソースを集約して一元管理

「氷山の理論」で見る要求と要件

 さらに赤氏は、要求と要件の違いが「騙し絵」を描くことにつながりやすいと指摘。要求と要件の違いを「氷山の理論」を使って説明した。氷山の理論とは「目に見える部分は8 分の1 程度で、残りの8 分の7 は水面下に沈んでいる。氷山の動きの威厳は目に見えない8分の7によって保たれている」というヘミングウェイによる考え。

 これについて、「要件として実現されている8 分の1 で、残りの8分の7 の要求を満たさなければ、氷山の動きの威厳を保つことができない」と考える。つまり、「要求は、ユーザーが情報システムで実現したいこと。要件は要求をふまえて、情報システムに盛り込むべきもの。この違いをつかみ、本当に必要なものを要件として定義していくことが求められる」(同氏)わけだ。

 ここで、要求仕様を引き出すことと、要件定義自体を行うことを混同してしまうと、ビジネス上のゴールが不明確になる。「不明確なまま実装フェーズに入ると、いきなりデスマーチが発生する」ことになってしまうのだ。

 また、そもそも、ユーザーは要求と要件の違い以前に、ビジネス要求とシステム要求がきちんと判別できていないケースが多い。ユーザーが言ったことを真に受けてしまうと、さらなる混乱を招くことになるわけだ。

 「要求と要件の整理は、最初が肝心だ。源流に極めて近いところで始めないと下流への流れをうまく作ることができない。一滴の水滴が川のうねりを経て、最後には大海に流れ込んでいくイメージだ」(赤氏)

トップダウンで骨組、ボトムアップで肉付け

 では、上流における業務モデリングで大切なことは何か。まず、赤氏が重視している基本原則は「トップダウンで骨組、ボトムアップで肉付け」だ。「現場の知恵は有効だが、ボトムアップが強すぎると「部分最適」に引っ張られる。間違っても、ボトムアップでトップダウンを潰すようことはあってはならない」とした。

 モデリングでは、データモデル、ブロセスモデル、CRUDマトリクスという3 つのモデルについてポイントを説明。データモデルの留意点は、業務部門に見せても理解できないことを踏まえ、画面イメージとエンティティを切り出して、フィールド一覧として提示するといった見せ方の工夫が必要だとした。

 また、プロセスモデルについては、現場で要求をひろい、現場が理解できるわかりやすい業務フローを描くことが重要だという。現場の人間を巻き込むには、現場視点に立ったストーリー性の高い話で惹きつけるのがポイントだ。また、モデルを作る際には、5W2H(When、Where、Who、What、Why、How、How many)をきちんと定義することが重要になる(図2)。

 最後に、赤氏は、「高品質のプロセスにより生成されたデータは、企業組織の資産になる。天高く舞う鳥の視点を持ちつつ、地べたを這って泥臭く仕様を固めていってほしい」とアドバイスした。

   図2:プロセス作成では、5W2H を明確に定義することがポイント

第18回Xupperユーザ事例紹介セミナーレポート1