第11回 株式会社NTT データ東海 様

事例カテゴリー

株式会社NTT データ東海

法人事業部営業担当課長 服部洋幸氏
要件定義にXupperをフル活用し物流倉庫システムの短納期開発を実現

NTTデータ東海は、自動車部品などを扱う専門商社の物流倉庫システム構築プロジェクトにXupperを活用。4ヵ月弱という厳しい納期要求に応えるために、膨大なビジネスフロー図を用いたユーザとのコミュニケーションで業務運用イメージを明確化し、要件定義から設計に至るプロセスの大幅な効率化を実現した。Xupperならではのビジネスフロー図の作成効率の高さが、今回のプロジェクト成功を支えた大きな要因となっている。

複数の外部倉庫を集約する物流倉庫システム構築プロジェクト

 NTTデータ東海の10年来の顧客であるT社は、自動車に使われる樹脂素材や部品、塗料などをはじめ、生産工程で必要となる機械用オイルやウエス、手袋などの消耗品まで幅広く扱う専門商社であり、研究開発部門やメーカー機能も有している。

 T社では商品物流機能として、東海地域を中心に外部委託を含む35ヵ所の物流倉庫を利用していたが、小規模・複数の外部委託倉庫は費用的にも運用効率の面でも問題があった。

 そこで、自社の研究施設内に新物流センターとして自社運用の大規模倉庫を建設することを決定。今回、NTT データ東海が手がけたのは、この新物流センターで運用する物流倉庫システムの構築である。


 なお、NTTデータ東海が最初に開発依頼を受けたのは2006年12月末。T社が要件に挙げたサービス開始日は2007年5月7日であり、非常に厳しい納期要求のプロジェクトとなった。


 システム化の対象業務は、言うまでもなく倉庫に関わる業務全般。入荷・入庫・出庫・出荷・在庫管理・ロット管理はもちろん、液体や薬品も保管するため、消費期限管理や危険物管理も含まれる。さらに、業務の状況に応じて要員を流動的に配置するという要員管理の機能も必要とされた。

 自動倉庫システムやハンディターミナル、基幹業務ホストとのインターフェースも必要だ。また、すでに倉庫の建物は建設中でLANケーブルが引けないため、無線LANの導入も必須。ほかに要員管理とも関係して、出荷状況などの作業情報をモニターに表示する「IT ボード」の導入も開発要件に含まれていた。


 新物流センターの倉庫は、保管目的に応じて大きく3 つに分けられている。1つは、一般資材商品を扱い、900 パレット強の保管能力を備えた資材倉庫。自動倉庫はここに入ることになる。

 もう1つは、300 パレットの保管能力を持つ危険物倉庫。そして、3 つ目が温度湿度管理が可能な定温倉庫。5 月7 日のサービス開始時点では、35 ヵ所ある外部倉庫のうち15 ヵ所分をこれらの新倉庫に集約し、約40 万アイテムの商品を管理することとされた。


 その根幹を支えるのが、新たな物流倉庫システムである。従来の外部委託倉庫による物流管理では、複数拠点をまわる配送効率の悪さはもとより、入出庫業務などがシステム化されていないため、属人的な管理によって誤出荷や不良在庫などが頻繁に発生するという問題があった。物流倉庫システムでは、これらの問題を撲滅することが命題とされていた。

厳しい条件の中、プロジェクトを成功させるにはXupperが不可欠

 このように、短納期かつ複雑なシステム要件のもと、2007 年1月早々にスタートしたT社の物流倉庫システム構築プロジェクトだが、プロジェクト開始後にはさらに厳しい条件が加わることになった。


 まず、一部システムの納期がさらに短縮されたことが挙げられる。新物流センターのサービス開始日は5 月7 日に設定されていたが、2月末の段階で急遽、危険物倉庫のみ先行して4 月上旬のサービス開始へと変更された。これは、危険物に関しては1ヵ月程度の十分なテスト運用が必要というT 社の業務判断によるものだ。

 さらに、ユーザ側の体制構築にも遅れが生じた。自社での物流倉庫システム運用はT 社にとっても新規の業務であり、実務経験者もほとんどいない。

 そのため、プロジェクト担当者の選任には試行錯誤を繰り返した。最終的に正式な担当者および運用体制が確定し、新体制でのキックオフが行われたのは3 月上旬となっている。


 もちろん、1月から2 月にかけてT 社の担当者が完全に不在でプロジェクトがストップしていたわけではない。何度も担当者の変更を行ったものの、徐々にコアとなるメンバーが決まっていったというのが実情だ。

 NTT データ東海では、その時点でアサインされていた担当者のもとへ足を運び、1月より要件定義を開始。2 月中旬まで、ヒアリング、運用課題の整理、要求仕様整理などの作業を順次実施した。


 ここで真価を発揮したのがXupperである。NTT データ東海は、以前よりXupperを上流設計ツールとして活用しており、過去にもXupperユーザ事例紹介セミナーにおいて事例発表を行っているほど、その有用性を十分に理解している。

 今回のプロジェクトに関しても、当初より要件定義および設計の効率化が不可欠と考え、Xupperを活用することについて事前にT 社の了承まで得ていたという。

ビジネスフロー図で業務を可視化しユーザと運用イメージを共有

 今回の物流倉庫は新設であり、T 社の担当者も業務の一部分しか分からない状況からプロジェクトがスタートした。そこで、NTT データ東海では、まず倉庫業務を目に見える形で情報提供し、運用を確定させていく中で課題や問題点を1つ1つ発見して、解決していく手法を採った。


 具体的には、Xupperで作成したビジネスフロー図の有効活用だ。倉庫業務のビジネスフロー図を作成し、それを見せながらT 社担当者へのヒアリングを実施。ユーザとのコミュニケーションを図りつつ、さらにレビューとビジネスフロー図の修正を繰り返し行った。

 こうして倉庫業務を徹底的に可視化することで、ユーザ側の運用イメージも次第に明確になってくる。逆に、運用イメージが明確にならなければ、仕様を確定することも不可能だ。

 今回のプロジェクトにおいて、NTT データ東海は特にこの工程を重視し、1月中旬から下旬にかけてヒアリングを10 回以上行い、80 枚以上のビジネスフロー図を作成した。


 続いては、物流量や確定している倉庫担当者の人員数、入出荷予定から運用を確定するステップとして、運用課題の整理を行った。ここでは、倉庫内での要員の動きを考慮した動線図なども作成。

 業務運用ビジネスフロー図と一緒に、Xupperにビジネスルール(設計資料)として格納していった。


 なお、NTT データ東海では、プロジェクトにおいて設計担当SE が個別機能の設計を行う場合に、ビジネスルールの記述内容をガイドラインとして作業することをルール化している。

 製造方式や基本機能をビジネスルールとして一元管理しておくことで、今回のプロジェクトのように自動倉庫の制御インターフェースや基幹ホスト連携、ハンディターミナルのプログラムなど、種類の異なる技術や設計要素が混在する環境においても、複数のSE が分担してスムーズに設計を実施することができるのだ。


 このように、Xupperを活用して要件定義の効率化を図ることで、NTT データ東海は、ほぼ3 週間ですべての仕様を確定することができた。ただし、続く基本設計および詳細設計の工程においては、ちょうどT 社の担当者が変わり、新体制へと移行した時期と重なったことも影響して、手戻りが少なからず発生したという。

 これも結果的には、Xupperで設計情報を一元管理していたことが、手戻りの影響を最小限に抑えることにもつながった。


 また、今回のようにAS/400 ホスト、物流倉庫システム、自動倉庫用サーバなど、複数のデータベース・システムへのアクセスが発生する詳細設計を実施する場合、データベースのエンティティ設計が完全に完了した上でプロセス設計を行うことが理想だが、現実的には、設計途中でのエンティティ(項目)変更・削除・追加などが発生することも多い。

 その際、設計書に書かれている入出力項目がデータベースから消えている、数値項目のはずがコードになっているといった齟齬が発生して、テストプログラムが突然動かなくなるようなケースも珍しくない。

 今回のプロジェクトでは、Xupperですべてのエンティティ情報と設計書情報を一緒に管理していたため、そのような問題が発生する前の段階での発見・対応が容易に行えた。これも、無駄な工数を削減し、工期短縮につながる大きなメリットと言えよう。


 最終的に、NTT データ東海は4 ヵ月弱という厳しい納期要求に答えることができ、T 社新物流センターの物流倉庫システムは、予定どおりサービスを開始。今後は残りの外部倉庫もすべて新物流センターに移管し、物流機能を完全に集約する予定だという。


 今回のプロジェクト成功の要因はもちろん上流工程だけではないが、NTT データ東海では、要件定義・設計におけるXupperの実効性を改めて高く評価している。


倉庫業務を可視化したビジネスフロー図

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