2015年事例1 株式会社JALインフォテック

事例カテゴリー

2015年 超高速開発事例セミナー

上流ツールXupper事例とアジャイル開発ツールGeneXus事例

JBCCが主催する「超高速開発事例セミナー」が2015年10月21日、都内にて開催された。本セミナーは昨年まで、JBCCの上流分析・設計ツール「Xupper」のユーザ事例紹介セミナーとして開催されてきたもので、通算19回目を迎える。今回より、開発・保守の品質およびスピード向上、コスト削減を実現する手法として近年注目を集めている「超高速開発」をテーマに掲げ、新たなスタートを切ることとなった。セミナーではまず、JALインフォテックの高信二氏が自社で展開しているXupper導入推進の取り組みについて紹介。続いて、JBCCの川上明治氏は「GeneXus」を活用したアジャイル開発、同社・佐藤秀憲氏はXupperとGeneXusの連携による超高速開発をテーマに、それぞれ講演を行った。

2015年事例1 株式会社JALインフォテック

Xupperの本格導入成功に向けて入念な準備と推進活動を展開
xupperjirei19_1_1.png


JALインフォテックの外販向けシステム開発を担当する事業部では、品質向上のための開発手法標準化の一環としてXupperの導入を決定。本格導入を成功させるべく、パイロットプロジェクトの実施や評価、課題整理などに取り組んでいる。Xupper導入推進タスクのリーダーを務める同社・高氏が、標準ツールの候補としてXupperを選択した理由、これまで実施してきた活動内容や今後の展開などについて発表した。

成果物の標準化を支えるツールとしてXupperに着目

 JALインフォテックでJALグループ以外のシステム開発(外販)を手がけるソリューション事業部では、2012年頃から赤字プロジェクトが増加。上流工程の要件定義や外部設計の甘さ、作成する成果物にバラつきがあり品質低下を招いていることなどが問題点として浮上した。


 赤字プロジェクト撲滅に向け、同事業部ではまず、品質向上の前提として「成果物の標準化」に着手。各種成果物間の整合性を担保し、記載レベルの統一を図る上ではツールの活用が効果的と判断し、上流だけでなく開発まで一気通貫で使える製品の導入を検討することとなった。


 高氏によれば、そのような目的に合致するツールは当時、XupperとIBM Rational 製品くらいしか存在しなかったという。JAL インフォテックは、かつて日本IBMグループの一員であった経緯もあり、Rational 製品の利用経験は豊富。しかし、オブジェクト指向のRational よりも、DOA(データ中心アプローチ)のXupper のほうが、同事業部の開発スタイルや設計思想にマッチしていた。また、リポジトリによる設計情報の整合性確保や、ビジネスフロー図、画面・帳票設計、エンティティ関連図がすべて一元管理できるといった特徴も高く評価。最終的にXupper の採用に至った(図1)。

Xupper導入経緯 工程ごとの他社製品比較
図1:Xupper導入経緯 工程ごとの他社製品比較

導入推進タスクを立ち上げ、パイロットプロジェクト実施

 Xupper の導入を適切に推進するために、JAL インフォテックでは高氏が中心となって「導入推進タスク」を発足した。

「試行錯誤でどんどん使っていく」のではなく、導入前の準備から入念に進めるために、導入推進タスクチームではJBCCに協力依頼して他社事例を研究。過去のXupperユーザ事例紹介セミナーにも登壇しているNTT データ東海およびジュピターショップチャンネルへのヒアリングも実施した。こうしたなかで、日次バックアップなどの運用方法の整理、社内教育、ツール習熟者の育成といった準備作業の重要性を認識できたという。


また、要件定義でXupper を利用する場合のインプット、アウトプット、プロセスを整理した「標準化ガイド」も作成。ただし、要件定義を試すのに適切なプロジェクトがなく、まずは外部設計フェーズでXupperを使用できるある会社の案件(以下、X 社案件)にて、パイロットプロジェクトを実施する運びとなった。導入対象機能(作成ドキュメント)は、データディクショナリ、エンティティ関連図、ビジネスフロー図、画面設計、IPO 管理、クエリーAPI(印刷)。2014 年9 月から2015 年3月にかけて、X社案件の外部設計でXupper を実際に利用するなかで、ツール活用のメリット/ デメリットの評価を行っていった。


外部設計におけるXupper の評価と課題整理

 パイロットプロジェクト担当メンバーが実感できた効果として第一に挙げたのは、リポジトリによる一元管理で設計情報の不整合が一切なくなったことだ。従来どおりExcel を使って要件定義で" きっちり作ったつもり"でも、外部設計でXupper にディクショナリを作成して入れてみると、かなりの割合で設計書間の不整合を発見できたという。


 一方で、デメリットも少なくない。たとえば、エンティティ定義のなかで「繰り返し項目」の設定ができないため、Excel を併用する必要があった。また、対象システムがコンシューマ向けWeb クライアントということもあって長い画面定義が必要だったが、Xupper の画面設計(GUI 設計)では400 行以上の定義ができず、画面設計の代替機能としてデバイス設計を使わざるを得なかった。エンティティ定義書への項目追加やIPO の操作など、メンバーの体感として入力作業の負荷が大きい部分も少なからずあった。


今までの利用経験を活かし、次は要件定義からの利用も

 課題は多いが、あらためてJBCC に確認した他社でのXupper 活用事例の現状(図2)などを見ると、そもそもX 社案件が「Xupper適用対象として必ずしも適切ではなかった」一面もある。つまり、Xupper が得意とする領域はメインフレーム系やC / S(クライアントサーバ)系、Web 系でも社内向けであり、それ以外のコンシューマ向けWeb クライアントなどは、どうしても対応しきれない部分(画面設計など)が出てくるということだ。前者は条件が合えば全工程・全機能を利用できるが、後者では要件定義やデータモデル設計、画面項目・帳票項目設計などに限定したXupper の" 使い分け"が求められる。


 こうした考察を踏まえつつ、あらためてXupper の本格導入を推進していくために、高氏ら導入推進タスクチームでは今後、要件定義期間2 〜3 か月の小規模案件を対象とした「要件定義段階からのXupper の利用・評価」にも取り組む予定だという。


今後の進め方について

図2:今後の進め方について

jirei_download.png